『銀河英雄伝説』

概要

『銀河英雄伝説』は、1982年に始まり、1989年に完結した杉崎憲治によるSF小説シリーズ。その後、アニメ化、漫画化、ゲーム化など、多岐に渡って展開され、現在でもファンが多い作品である。このレビューでは、近年刊行された漫画版について紹介する。

宇宙を舞台に、東西銀河の戦いを描いた物語。東銀河を率いる自由惑星同盟と、西銀河を支配する銀河帝国との戦いを中心に展開する。主人公は同盟側の将官ラインハルト・フォン・ローエングラムと、帝国側の将官ラインハルト・キルヒアイス。2人の名前が似ているが、これは作品の壮大なストーリー展開の一端を占める。

本作品には、数多くのキャラクターが登場する。緻密なキャラクター描写が特徴で、それぞれが独自の生き様を持っている。戦争を軸に物語が進むが、それによって生まれる人間模様が、作品を色濃くする。

銀河を舞台とするSF作品であるが、人間模様が充実した物語になっている。そのため、SF好きからはもちろん、人間ドラマが好きな人にも見て欲しい作品である。また、対照的な2つの陣営の関係性が、物語に緊張感を与える。

本作品の漫画版は、作画を坂口尚が担当している。全10巻で、小説版を忠実に再現している。ただし、物語の中心となる2人の将官の関係性が、従来よりも親密なものに変化している。これによって、小説版にはない独自の読みどころが生まれている。

『銀河英雄伝説』は、極めて緻密な設定と筆致、そして壮大なストーリー展開が特徴的な、まさにSFの傑作である。漫画版は、小説版に忠実に再現されているが、独自の改変も加えられ、読みどころの幅が広がっている。人間模様豊かな物語が好きな人には、是非一読して欲しい作品である。